oitaumare’s diary

気になる裁判例を紹介

未決拘禁者の喫煙の禁止事件

最高裁昭和45年9月16日の事件(憲法判例百選(第6版)15)

 

1.あらすじ

 公職選挙法で逮捕され、高知刑務所に移監されたXが、看守に喫煙を希望した。

 しかし、Xは、釈放されるまで喫煙が許されなかった。

 そこで、Xは、旧監獄法施行規則96条「在監者には酒類又は煙草を用うることをゆるさず」の規定が、憲法13条に保障される「喫煙の自由」を侵害すると主張した。

 

2.問題となる条文

  憲法13条

  「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

 

3.判例の中身

 未決勾留は、逃走または罪証隠滅の防止を目的として、被疑者の居住を監獄内に限定する。そして、監獄内では、その秩序を維持するために、被拘禁者の自由に必要かつ合理的な制限を加えることもやむを得ない。

 必要かつ合理的な制限か否かは、①制限の必要性の程度と②制限される人権の内容と具体的制限の態様との較量で決める。

①喫煙に伴う火災発生の恐れ、喫煙を認めることによる通謀のおそれがあり、罪証隠滅、火災発生に伴う逃亡のおそれ、火災による人道上の重大な結果が生じるおそれがある。

②煙草は生活必需品まで言い難く、普及率の高い嗜好品にすぎない。愛好者に対して精神的苦痛を生じさせるものであるが、人体に直接障害を与えるものではない。

 よって、拘禁された者に対する喫煙を禁止する規定は、憲法13条に違反するものではない。

 

4.コメント

 未決拘禁者とは、刑事裁判がいまだ確定していない状態で、拘置所等に身柄を拘束されている人である。有罪と言われておらず、逃亡・証拠隠滅防止のために拘置所等に入れられている人である。

 火災をわざと起こして逃亡や証拠を隠滅する可能性がある一方、たばこは生活必需品ではないので、憲法に反しないと言われた判例

 煙草吸わないけど、最近ほんとにたばこを吸う人たちの場所がなくなっているのがかわいそうだと思う。結果的にたばこ農家等にも大打撃を与えているからなぁ。