oitaumare’s diary

気になる裁判例を紹介

パトカー追跡による第三者の損害

最高裁昭和61年2月27日(行政判例百選(第6版)224)

 

1 あらすじ

  パトカーが速度違反の車両を追跡していた。その犯人車両は赤信号を無視して2㎞以上運転しパトカーを振り切ったと考え減速したが、パトカーは時速80㎞で継続して追跡していた。犯人車両は、パトカーを認め、再度赤信号を無視して交差点に進入し、犯人車両が、他の車両に衝突した。

  パトカーによる追跡継続等が過失であるとして訴えられた。

  1,2審は、追跡中止をすべきであったとして、パトカーの過失を認めた。

 

2 問題となる条文

  警察官職務執行法2条1項

 「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問することができる。」

 

3 判例の内容

  警察官は、被疑者を追跡でき、その目的のためにパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合に、その追跡行為が違法というためには、①追跡が職務執行上必要不可欠か、②被害発生の具体的危険性に照らし、追跡の開始・継続もしくは追跡の方法が不相当かで判断する。

 ①車両番号を確認していても、氏名等が確認できておらず、逃走する車両に対しては究極的には追跡が必要である。

 ②格別交通渋滞がなく、午後11時であったこと等からパトカーの乗務員に具体的危険性を予見することができず、パトカーの追跡方法自体も特に危険を伴うものでなかった。

 よって、違法でない。

 

4 コメント

  車両番号わかっても、運転している人が誰かわからないから追跡する必要があって、道路状況や時刻、追跡方法から具体的危険性があったといえないみたいである。

  もっとも、死者も出ているので、現代社会だと当時以上に批判を受けそうな気がする。警察は犯人も世間も敵ばかりで大変だ。