oitaumare’s diary

気になる裁判例を紹介

5年退職金事件

最高裁昭和58年9月9日の事件

 

1.あらすじ

 ある会社の給与規定に、就職後5年経過したら、退職金を払うという規定があった。

 5年経過して退職金をもらった従業員は、再入社の手続きをとることなく、これまで通りの就労を継続していた。

 これは、退職金の前払い措置として行われたものであり、定年前に会社が営業停止となって退職金が払えなくなることを防止するためであった。

 

2.問題となる条文・文言

  所得税法30条1項

  退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及び「これらの性質を有する給与に係る所得をいう。」

 

3.判例の中身

 退職所得に優遇措置を講じている理由は、退職者が長期間特定の事業所に勤務してきたことに対する報酬及びその長期間の就労に対する対価の一部分の累計であり、退職者の退職後の生活を保障するためである。

 本件では、従業員は5年ごとに退職するのではなく、従来の勤務が継続していることから、5年ごとに与えられる所得は、「退職所得の性質を有する給与」に該当しないとされた。

 

4.コメント

  給与と退職金では、退職金の方が税制上優遇されている。

  具体的には、勤務年数に応じて控除が設定されており、元の金額を二分の一して課 税など、優遇されている。

  ①数字でいうと、30年間勤務した人が受け取った2000万円が退職金だとすると、

   {2000万円ー(40万円×20年+70万円×10年)(退職控除)}×1/2=250万円

    250万円に係る税金は、約15万2500円

  ②2000万円が給与所得とすると、

   2000万円ー245万円(給与控除)=1755万円

    1755万円に係る税金は、約425万4000円

  このようにだいたい400万円ぐらい収める税金がかわる。

  老後のためのお金に大量の税金かけられたら不満あがりそうだから、よくできているなぁ。