oitaumare’s diary

気になる裁判例を紹介

わが子の略取事件

最高裁平成17年12月6日の事件

 

1.あらすじ

 東京で暮らしていた夫婦が、けんかをして、妻が青森の実家に子(当時2歳)と一緒に帰った。

 その後、東京で別居中だった夫が、青森にこっそりと行き、保育園に送迎時に、すきをついて子を連れ去った。

 

2.問題なる条文

  刑法224条

  「未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

 

3.判例の中身

  母親とその両親(祖父母)と暮らし平穏に暮らしていた子を、保護されていた環境から引き離して自己の支配下に入れる行為は、未成年者略取の構成要件に該当する。

  夫は共同親権者であったが、強引な行為を行っていること、及びその後の観護養育の見通しもなかったのであるから、違法性を阻却する特段の事情もないことから、夫には刑法224条が成立する。

 

4.コメント

  親権者であっても、強引な手段で、子を誘拐するような行為は、犯罪行為と認定された。

 なお、刑法は、①構成要件に該当すること(条文の行為をしていること)、②違法性阻却理由がないこと(正当行為等がないこと)、③責任能力があること(例えば14歳以上であることなど)が認められてはじめて成立する。

 本件では主に、共同親権者であったことが、違法性阻却自由に該当するかが検討されている。

 子に会うために青森まで行こうとするその熱量はすごいと思ってしまう。