校庭開放中の事故
・最高裁平成5年3月30日の事件(行政法判例百選(第6版)248)
1.あらすじ
Xらは、5歳10か月の子Aを連れて、一般開放されたY町立の中学校の校庭内でテニスをしていた。
その際、Aが審判台に昇って、背あての鉄パイプを握って後部から降りようとし、審判台がそのまま倒れ、Aが下敷きとなり死亡した。
Xらは、設置管理者であるY町に対し、損害賠償を提起した。
1審(仙台地裁昭和59年9月18日)及び2審(仙台高裁昭和60年11月20日)は、Y町が3割の過失があり、Xらには7割の過失があると認めた。
(☝審判台の一例)
2.問題となる条文
国家賠償法2条1項
「道路、河川その他の『公の営業物の設置又は管理に瑕疵』があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
3.判例の中身
Xの敗訴、Y町に責任なし。
国家賠償法2条1項のいう、公の営業物の設置又は管理に瑕疵とは、公の営業物が通常有すべき安全性を欠いていることであり、営業物の構造、本来の用法、場所的環境的利用状況等の事情を総合考慮する。
審判台は、審判者がコート面より高い位置から競技を見守るためのものであり、本来の用法に従って使用する限り転倒の危険性を有するものではない。同中学校では、生徒らが使用し、20年の間事故がなかったものである。
幼児がどのような行動に出ても不測の結果が生じないようにせよというのは、管理者に不能を強いるものである。幼児が異常な行動に出ないようにしつけるのは保護者側の義務である。ましては、テニスの競技中にもAの同行に看守すべきであり、それが容易に制止することが可能であった。
4.コメント
公の公共物で、子どもがけがをした場合に、だれが責任を負うのかということが問題となった。
本件の審判台は、これまで事故がなかったこと、子どもの使用方法が異常であったこと、子どもを制止することが容易であったこと等から管理者に責任がないとされた。
中学生のとき、テニスの審判台乗ったことあるけど、意外と高かった記憶がある。子どもが乗ったら危ないものだとは思う。