犯人による犯人隠避罪の教唆
・最高裁昭和60年7月3日の事件
1.あらすじ
暴力団員のXが、最高速度40㎞のところを、105㎞で走行した。そのうえ、検挙しようとした警察官の停止指示を無視して逃走した。
その後、Xは、身代わりとして団員Yを出頭させ、Yが犯人であると虚偽の申告をさせた。
2.問題となる条文・文言
刑法103条
「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」
3.判例の中身
犯人が他人を教唆して自己を隠避させたときは、刑法103条の犯人隠避罪の教唆犯の成立を認める。
4.コメント
刑法には、犯人を隠避(隠す行為)することも犯罪としているが、犯人が、自分自身を隠避する行為は、違法行為ではない。
他方、犯人が、他人を教唆(そそのか)して、他の人に隠避行為(ここでは、身代わりとして出頭すること)をさせた場合は、犯人隠避(刑法103条)の教唆(61条1項)罪が成立する。
理由は、犯人自身の隠避行為は、防御の自由の範囲内であるが、他人を教唆してまでその目的を遂げようとすることは防御の濫用であるからである。
ドラマとかだと、暴力団が、もっと凶悪な犯罪で身代わりをたてるケースが多いので、速度違反でわざわざ身代わりたてるのかと思ってしまう。